薬・サプリ・ヘルスチェック器具

『知って飲みたいクスリの疑問 Q&A』

INDEX

Q1 薬は水で飲まなければいけないのですか。緑茶やコーヒー、牛乳、ビールで飲んではダメ?

 たいていの薬は、水で飲めば早くよく効くということです。本当は、ぬるま湯がベスト。180~200ミリリットルのぬるま湯(コップ1杯程度)で飲めば、薬はより溶けやすく、吸収も早い。ですからその場にお湯があるならば、ぬるま湯で飲むことをおすすめします。水の場合も、あまり冷たいのは避けたほうがいいですね。

 ちなみに、アスピリンをコップ1杯の水、コーラ250ミリリットル、コップ2杯のビールのそれぞれで飲み、その吸収率を比較してみると、最初から水が一番。3時間後には効きめもピークに達するのに対し、コーラやビールは5時間たってようやくピークにたどりつくといった具合です。(日本病院薬剤師会雑誌Vol. 22, No. 1より)熱や痛みをかかえた人にとっては、一刻も早く効いてほしいもの、この差はやはり問題ですね。

 水以外のものに含まれるいろいろな成分が、薬の吸収を遅らせる要因になるのです。また、コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるタンニンやカフェイン、ドリンク剤にもカフェイン、牛乳中のカルシウムやマグネシウム・・・・・・。いずれも薬の成分とぶつかったり重なったりするおそれがあります。たとえば、私たちがよく飲むかぜ薬には、解熱鎮痛成分(生薬成分の場合を除く。)の配合に伴い、その鎮痛作用を補助する目的で、カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等が配合されている場合があります。それをコーヒーやお茶で飲めば、カフェインが重なってしまう。その上、1日何杯もコーヒーを飲むような人は、カフェインの量が増える一方。カフェインが1回約300ミリグラムを超えるとイライラしたり、頭痛をおぼえたりするといいます。これはもう、リッパな副作用です。

 市販の缶コーヒー1本に約70ミリグラムのカフェインが含まれています。さらにエナジードリンクとして販売されている飲み物には、かなり高用量のカフェインが含まれています。成分表示を確認して普段からあまりカフェインを飲みすぎませんように。

 また、牛乳の中のカルシウムやマグネシウムは、テトラサイクリン系の抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリン等)、ニューキノロン系の抗菌剤(ノルフロキサシン、シプロフロキサシン他)と相性が悪く、一緒に飲むと薬の吸収がかなり妨げられてしまいます。反面、牛乳は胃腸を荒らしやすい薬と一緒に飲めば、胃への刺激を和らげてくれるというメリットも。さらに思いもかけない相互作用に関しても注意が必要で、ニューキノロン系の抗菌剤の中にはカフェインが作用を無くすように働く、体の中の酵素の働きを弱めてしまうことが知られているものがあります。肺炎でニューキノロン系の抗菌剤が処方されて、元気が出るようにエナジードリンクを買って飲む。それではカフェインの作用が強く出すぎて、動悸がしたり眠れなくなったり・・・。ゆっくり休むどころではなくなってしまいます。とりあえず「薬は水で飲む」を常識にしましょう。

農林水産省( https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html )2023年12月現在

Q2 ずっと水なしで薬をのんでいます。効きめが遅れて出る以外にも、デメリットがあるんでしょうか?

 あります。一番の問題は、薬がのどにつかえて溶け出し、粘膜を傷つけて食道潰瘍になりかねないことです。特に、カプセル剤のカプセル部分はゼラチンでできているため、湿り気のある粘膜にくっつきやすい。食道にくっつき、そこで薬が溶け出して食道を傷つける可能性があるのです。適量の水ですばやく胃へ運んでやれば何でもないことなのに、病気を治すための薬で潰瘍をつくったのでは笑い話にもなりません。

 病院でよく使われる2号カプセル剤(長さが約2センチくらいの大きさのもの)2個を水なし、水25ミリリットル、水45ミリリットルでのんだ場合の実験報告を紹介しましょう。水なしでは5名中2人、45ミリリットルの水でも7名中2人が、それぞれカプセル1個ずつを食道にひっかけてしまいました。水25ミリリットルで飲んだ4人は全員問題なし、という結果でしたから、必ずしもトラブルが起こるとは言えませんが、45ミリリットル(コップ4分の1杯)の水でものどにひっかかる可能性はあるということ(薬事新報No. 1663, 1991)。また、一度ひっかかってしまうと、それを胃へ落とすのにコップ何杯分もの水や、固形物をとる必要もあったそうです。

 やはり、薬は十分な水で飲みたいもの。一般に180~200ミリリットルのコップ1杯分が適量といわれていますが、多すぎて一気に飲めないという人は3回ぐらいに分けて飲んでください。解熱鎮痛消炎剤や、痛風治療剤、下剤などは、特にたっぷりの水で飲んだほうがよい薬です。でも、夜眠る前に飲む睡眠薬など、たっぷりの水で飲むと夜中にトイレに行きたくなって困る、あるいは水分制限されている人の場合は、少量の水 あるいは水なしで飲めるOD錠などもあります。薬は、コップ一杯の水で飲む。それが一般的な常識。でも、水分を制限されている人は、あなたにあった薬への変更が大切です。是非、薬剤師にご相談ください。

Q3 食前、食間、食後に飲む薬の違いは何でしょう。その時間は必ず守らなければいけないのですか?

 食前とは、食事をとる約30分前のこと。食欲増進剤や漢方薬、吐き気を抑える薬は、この空腹時に飲むと効果が高いようです。食間というのも空腹時ですが、こちらは食後2時間ぐらいが目安。直接胃の粘膜に接して効果を表す薬がこの時間帯に飲む薬の代表格でしょう。食後は、食事をとった後約30分以内に飲むこと。市販薬、処方薬を問わず、多くの薬がこの飲み方を指示されているはずです。

 なぜ、食後に飲む薬が多いのかというと、まず、食物が胃に残っているために薬で胃を荒らさなくてすむという点。また、食事をすると胆汁が分泌され脂溶性の薬が吸収されやすいのも理由の一つです。そして、食事と組み合わせれば飲み忘れもしにくいだろうというわけです。したがって、胃の荒れを防ぐことを第一目的にする場合は、きちんとした食事をとれないなら、クラッカー1枚、牛乳1本でもいい。何か少しでも胃に入っていれば、薬による胃への負担は軽くできます。

 以上のように、食前、食間、食後の区別は薬の効きめをよりよく発揮させると同時に、副作用を避ける意味も。一つの原則として守ったほうがいいでしょう。

 ただし、食後服用の薬には、食物と一緒にとることでより吸収の良くなるものがある反面、食物が吸収を妨げているものもあります。たとえば、解熱鎮痛消炎剤として使われるアスピリンは、食物によって吸収が遅れ、効きめが低くなる場合も。つまり、本当は空腹時に飲んだほうが効くのに、胃への副作用を重要視して食後服用にしているわけですね。実験でも、十分な量の水で空腹時に飲んだアスピリンは、食後に飲んだときより早くしかも多く吸収される、という報告があります。

 頭痛や歯痛、生理痛などで、すぐにでも痛みをとりたい人は、空腹時に飲むことも考えられなくはないのですが、頭の痛みは治っても胃が痛んだのではお話になりません。痛み止めの市販薬は、アセトアミノフェンのように空腹のときに飲んでよい薬かもありますから、薬剤師や登録販売者に相談して商品を選んでください。

 帯状疱疹やヘルペスの治療に使用されるアメナメビルは、空腹時に投与するとアメナメビルの吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、食後に服用するよう指示されます。できるだけ早くに服用したほうがよいので、食事まで待つのではなく食前又は食間のタイミングで服用する必要がある場合は、軽食等を摂取した上で服用するとよいとされています。

 薬と食事の関係、それが重要な意味を持つ場合があります。食後に飲むよう指示されたときは、食事をとらないときはどうしらよいか、その対応策を確認してください。

 薬の飲み方には、食事時間に関係なく一定の間隔で飲んだほうがよい薬もあります。

たとえば、喘息、てんかん、不整脈の薬、それにある種の抗生物質などがそうです。これらは、血中の濃度をできるだけ一定に保つことによって効果を上げるタイプ。そのために設定された服用間隔を守らなければ、十分な効果が得られない可能性もあります。といっても、仕事や学校の関係で人によっては守りにくい時間帯があるかもしれません。

 そういう場合も医師に相談してください。その人の生活サイクルに合わせて、無理なく服用できるよう、剤形の変更や時間のアドバイスなどいろいろ配慮してくれると思いますよ。

Q4 いつものんでいる薬を飲み忘れたときは、気がついた時点で飲むべき?それとも次回まで待つ?

 薬によって対処法も違いますが、一般的には気がついたときに飲むか、次に飲む時間が迫っていればそれまで待ち、1回分だけ飲む、ということでいいと思います。

 かぜで頭が痛かったり熱があるときに、市販のかぜ薬を飲んだとしますね。1日3回食後服用ということで、まず朝食後に1回飲んだ。しかし、昼食のときにはすっかり忘れて、気がついたらもう3時。なんていう場合は、その後も飲む必要はありません。きっと、頭痛や熱がおさまったために忘れたのでしょうから。症状がなくなれば、このような市販薬の対症療法薬とはサヨナラです。

 あるいは、かぜで抗生物質をもらい6時間おきに飲むよう指示されたような場合、深夜に飲む時間がきたとします。そのときに、病人がぐっすり眠っている場合、起こしてまで飲ませるべきかどうかは難しい問題です。

 つまり病気の重さによっては薬を飲ませるためにわざわざ起こしたりして飲ませなくてもよいとか、目覚ましをかけて無理に起きなくてもよい場合もあるでしょう。しかし1日を4等分して飲むように指示されることもありますから、飲むのが覚醒時間帯にないときの対応を確かめておくことが大切です。

 注意しなければならないのは、薬物療法を始めたばかりで、医師が治療方針決定のため、特に注意深くその効果を観察しているときの飲み忘れです。

 また、心臓の弁置換(ちかん)手術を受けた人や血栓(けっせん)症、塞栓(そくせん)症の治療でワルファリン(抗凝固剤)を飲んでいる人。心臓の病気でジゴキシンを飲んでいる人、てんかんの治療でフェニトインを飲んでいる人、甲状腺ホルモン剤等を飲んでいる人、以上の人たちはまず飲み忘れしないことが大切。もし忘れても、次に2回分の量を飲まないことです。一度に2回分を飲んで血中濃度が上がりすぎて、重大な中毒症状を起こすことがあるかもしれません。もし飲み忘れたら、医師または薬剤師のアドバイスを受けてください。

 さらに、慢性疾患などで常に薬を飲んでいる人が、新しい薬を試しているときや、検査の日に飲み忘れたら——。必ず、飲み忘れたことを医師に伝えてください。でないと、医師は薬の効きめに疑問をもち、もっと強いものを処方したり、用量を多くしてしまうかもしれません。

Q5 高血圧で毎日何種類かの薬を飲み始めましたが、飲み忘れしない方法があれば教えてください。

 7日でなくなるはずの薬が8日目にも残っていた、なんていう経験はどなたにもあるでしょう。飲み忘れていたことさえ気づかない人ですね。これはやはり問題。忘れないための方法としては、薬剤師に「ワンドーズ・パッケージ(一包化)にしてくれますか」と言ってみてください。OKなら、1回分ずつをパックして渡してくれるでしょう。

 お薬カレンダーに入れ込んだり、おしゃれなピルケースに薬を移し入れ、服用時間を楽しく演出するのもいいですね。

 また、自分の飲んでいる薬の一つ一つの名前や働きをよく知ることも、飲み忘れ防止につながります。高血圧のあなたは、これから飲み始める薬についてご存知ですか? 何ていう商品名で、どんな成分があり、どういう効果をあらわす薬なのか。お薬の説明書を見たら、どれもこれも血圧を下げる薬だなんてことがわかったとします。では、なぜ、血圧を下げるものばかりこんなに必要なのでしょう。

 そんな疑問がわいてきたら、さっそく医師や薬剤師に聞いてください。

 答えは、同じ血圧を下げる薬でも、からだの中で作用する仕組みは皆違うからです。血圧を下げるために、いろいろな仕組みで薬が働き、その総合力によって正常な血圧を保てるのです。理由がわかってみれば、これらの薬があなたにとっていかに大切なものか、実感できるのではないでしょうか。長くつき合っていく薬の一つ一つに納得がいき、なくてはならないものだと思えれば、飲み忘れは防げるはずです。

 他にも、薬を飲む時間にスマホのアラームが鳴るようにしたり、あなたなりの工夫をしてみてください。自分の薬を知り、薬と“親しく”なることから始めてみてください。

 認知症や物忘れの激しい高齢者の場合は、家族やまわりの人のサポートが必要です。1回に1日分を飲んでしまったりすると大変ですから、見えるところには薬を置かないほうがいいですね。一人暮らしの方の場合、介護保険を使いお薬カレンダーに薬をセットしてもらう。薬剤師、看護師、ヘルパーに薬の管理をしてもらう。地域包括支援センターに相談することもお勧めします。

Q6 薬の量は大人も子供も同じ? 体格差は? 関取と我々では違うと思いますが・・・。また男女差は?

 市販薬では15歳以上を大人とし、15歳未満11歳以上とか、11歳未満6歳以上というふうに、年齢層をいくつかに分けて用量を定めています。つまり、大人と子供では薬の量も違うわけです。効き方のゆるやかな市販薬なら、この程度の分け方で問題はありません。

 しかし、病院でもらう薬は、体格や体重、病状などをちゃんと考慮して出されます。日本人の場合、体重50~60キログラムの人を標準として用量が決められています。関取と我々では体重差はとても大きいです。薬の量も違うかもしれません。ただ、体重とからだの機能は正比例するわけではないので、必ずしも大きいから用量も多い、とは断言できません。疑問があれば医師か薬剤師に聞いてみてください。

 男女差は、女性には少なめがいいという医師もいるし、あまり関係ないという医師もいてまちまち。年齢的には、お年寄りに要注意。薬を代謝する肝臓や、排泄する腎臓の機能が衰えているため、薬がからだの中にたくさん残って効きすぎるきらいがあります。それで副作用が出ては大変ですから、子供の場合、ふつうは大人の3分の1から2分の1くらいの量から始め、様子を見ながら徐々に増加していくのがいい、といわれています。

 さらに、子供の薬用量は主に体表面積から割り出し、薬の種類によっても増減されます。小さな子が熱を出したりしたときに、大人の飲む市販のかぜ薬を少しだけ与える母親がいますが、やめてください。かぜ薬に入っている成分によっては、小児に与えないほうがよいものもあります。体のしくみが完成していない、特に乳幼児には小児用のお子さんの年齢の用法用量がある薬を与えましょう。

 子供は大人のミニチュア版ではありません。どうぞ一言相談を。

Q7 うちには老人が2人いて、それぞれがたくさんの薬をのんでいます。家族としての注意点は?

 人は誰でも年をとると、体のあちこちに支障が出てきます。歯は入れ歯が必要になり、眼は白内障(はくないしょう)緑内障(りょくないしょう)で見えにくい。耳は聞こえにくくなるし、記憶力も減退。内臓の働きも衰えが目立ってきます。こうなると、歯科、眼科、内科と通い歩くことが多くなり、薬も多くなります。

 青森県下の調査では(医薬品相互作用研究Vol. 15, No. 2より)、高齢の外来患者の場合、1人が平均4~5剤。驚くことに21剤も受けとっている例があったとか。通う病院が違えば、同じような効果の薬を出されることもあり、それらののみ合わせによる副作用の発生率はグンと高くなります。眼科でもらう薬と内科でもらう薬は、関係ないから大丈夫だろう? そんなことはありません。口からのんだ薬は、すべて胃から腸へいき、そこで血液中に吸収されて肝臓へ。さらに心臓の右心房から右心室へいって肺をめぐり、再び心臓の左心房、左心室を通って全身に送り込まれていきます。

 薬の効きめは、この全身の血管で運ばれて行った先々の作用部位(例えば受容体とかレセプターともいう)に作用(結びつく)することで発揮されます。ですから、薬(のみ薬に限らず貼り薬や坐薬などでも)体の中でぶつかり、悪い影響(副作用)を及ぼす可能性があるのです。そこで、診察を受けるときは、他にどんな薬をのんでいるかを、必ず医師に伝えてください。薬の数が多かったりして、本人が名前を覚えきれないようでしたら、お薬手帳を、診察券と一緒にもたせるようにしましょう。

 また、病院でもらっている薬は市販の薬ともぶつかることがあります。薬局でお年寄りにのませる薬を買うときも、お薬手帳ももっていってください。そして、そこの薬剤師に見せて、今のんでいる薬とぶつからない成分のものを、さらに治療中の病気に悪影響を与えないものや、市販薬の購入が医師から処方された服用中の薬の副作用の可能性などを判断して選んでもらいましょう。

 薬ののみ忘れ、のみ間違いにも要注意。薬をのむ時間にひと声かけてあげるだけでも、かなり効果があると思いますよ。ほとんど寝たきり状態のお年寄りに薬をのませるときは、必ず上半身を起こしてのませ、薬が胃に落ちやすいようにします。のみ込みにくいような形の薬や、散剤(粉薬)などは、はじめに少し水を含ませてから与えるとスムーズにいきます。

Q8 いろいろな形の薬がありますが、それぞれの効き方やのみ方の違いについて説明してください。

 薬の形を剤形(ざいけい)といいます。剤形は内用(ないよう)剤、外用(がいよう)剤、注射剤の3つに大別できますが、一番種類が多いのは内用剤。口からのむタイプの薬です。外用剤は皮膚や粘膜から体内に吸収し、局所的あるいは全身的な効果を期待する薬。注射剤は注射針を通して、直接体内に注入する薬。効きめは、この注射剤が最も早く出ます。
 内用剤と外用剤には、それぞれにいろいろな剤形のものがあります。主な種類を次にあげてみましょう。まず、内用剤から。

散剤・・・・粉薬のこと。古くからおなじみですね。量を微妙に調節しやすいのが特徴。水薬の次に吸収されやすい(効きめが早い)のもメリットでしょう。オブラートに包んでのむ方もいらっしゃいますが、粉の胃薬などは苦みや香りが作用に影響しますからオブラートでくるんでのんだりしないでください。

顆粒剤・・・・ツブ状にした薬。散剤のように飛び散る心配はなく、保存性にもすぐれています。ただ、入れ歯の人は歯の間に挟まったりしてのみにくいかもしれません。また、見た目は顆粒剤と同じですが、水に溶かして用いるドライシロップ剤もあります。

丸剤・・・・球状の薬。これも古くからあるタイプで『正露丸』は、すぐに思い浮かぶでしょう。

液剤・・・・水薬のこと。内用剤の中で一番吸収の早いタイプ。びんをよく振り、コップなどに移し入れてのむのがコツです。この時のふり方に注意してください。ただ手にもって振るだけだと泡だって量が正確に測れません。水薬のふり方は上下さかさまにすることを繰り返します。保存性は低く、一度口を開けてしまったものなら、シロップ剤などで約10日の有効期限です。

カプセル剤・・・・粉末や顆粒の薬を、ゼラチンでできた硬いカプセルに入れた硬カプセル剤と、弾力のある柔らかいゼラチンのなかに薬を封じ込めた軟カプセル剤があります。軟カプセル剤は、液体のものをカプセルにできるメリットがあります。ゼラチンは食道粘膜にくっつきやすいので、必ず十分な水かぬるめのお湯でのむこと。

錠剤・・・・薬を圧縮して一定の形にしたもの。裸錠とコーティング錠があり、後者には薬の苦みや臭いを消したり、成分の変質を防ぐために外側を糖類やフィルムでコートした糖衣錠、フィルムコーティング錠、胃で溶けないで腸で溶けるように工夫された腸溶剤などがあります。また、作用が長く続くように工夫された錠剤もあります。錠剤はつぶすとせっかくの工夫が無駄になってしまうものもあります。つぶしたりする場合には、医師または薬剤師、市販薬の場合は登録販売者に相談してください。

バッカル剤・舌下剤・・・・バッカル剤は頬の内側と歯茎(はぐき)の間に、(ぜっ)(か)剤は舌の裏側に置いて、そこの粘膜から血液中に直接的に吸収させる薬。舌下錠は速効性があるので、心臓発作などの急を要する場合に使われます。
 外用剤には、錠剤、カプセル剤、液剤など内用剤と見た目は同じタイプのものの他、次のような形があります。

軟膏剤・クリーム剤・・・・半固形の、皮膚や粘膜に直接塗る薬。混ぜる基剤によって、軟膏とクリームに分けられます。患部の状態に応じて両者が使い分けられます。

パップ剤・・・・粉末剤と精油成分を合わせて泥状にした薬、湿布によく利用されます。

テープ剤・貼付剤・・・・薬を塗ったテープ状のタイプ。患部や患部の近くの皮膚にはりつけて、体内へ吸収させます。局所作用や全身作用を期待して使用されます。局所作用を期待して使用されるものとしては消炎鎮痛用が多いですが、心臓の発作予防など全身作用を期待して使用されるものもあります。また、見た目は錠剤のように見えても、アフタ性口内炎の患部に貼りつけるものなどがあります。

坐剤・・・・肛門や膣に挿入し、そこで溶かして粘膜から吸収させるもの。局所的、全身的に効くものの両方があります。体温で溶けるものと浸出液で溶けるものとあります。体温で溶けるものは熱に弱いので冷蔵庫で保管するといいでしょう。

点眼剤・眼軟膏・点鼻剤・点耳剤・・・・点眼(てんがん)剤は液剤を眼に滴下するもの。眼軟膏は軟膏剤を下まぶたの内側に入れて、まぶたの上から軽くマッサージするもの。(てん)()剤は、液剤を鼻に滴下するもの。(てん)()剤は、横になって液剤を耳に滴下するものです。点耳薬の場合、薬が冷たいとめまいを起こすことがありますから手で温めて使用してください。点耳後そのままの姿勢を保ちます。点耳の場合:2~3分、耳浴の場合:約10分です。その後、ティッシュペーパーなどを耳にあてて起き上がり、耳の外へ流れ出た点耳液を拭き取ります

噴霧剤・・・・噴霧器に入った液剤などを鼻腔や口腔(こうくう)に噴霧して使う薬。前述の点鼻剤にもこの形がありますが、ぜんそくやアレルギー、鎮咳去痰などにも利用されます。点鼻薬は鼻をかんでから使用。(正しい鼻のかみ方は、息を吸って、すった息を片方の鼻を抑えてもう片方の鼻から息を出す感じで静かにかみます。) 

以上、すべての剤形は使いやすく、より効果的になるよう工夫されたものばかりです。

Q9 1日3回、2回、1回と、薬をのむ回数がいろいろあるのはなぜ? 少ないほうが便利ですが・・・

 薬には、それぞれに体に吸収されてから、効きめの継続時間があるからです。

 口からのんだ薬は胃で溶かされ、腸で吸収され、門脈という血管を通って肝臓へ。ここでいったん解毒(げどく)(代謝)され、解毒され切れなかった薬が心臓や肺をめぐり、血液によって全身をめぐります(Q7参照)。この血液中に入った薬の成分量(血中濃度)が最も多くなってから徐々に減り、半分になるまでの時間を、半減期といいます。また、その薬の作用が続く時間を作用持続時間あるいは有効時間といい、これが薬によって異なるのです。

 有効時間を過ぎれば薬は効かなくなってきますから、その頃を見はからって再びのむ。この間隔が薬によって違うため、1日3回とか1回というのみ方になるわけです。ちなみに、一度のんだ薬のほとんどが排泄されるには、半減期の約5倍の時間を要します。

 ご指摘のように、忙しい現代人には薬をのむ回数が少ないほうがありがたいですね。テレビのCMでも「まだ、1日3回のんでますか?」というのがありますが、3回を1回にしても効きめが持続するように、薬の形(剤形)をいろいろ工夫しています。特に、慢性病で、毎日必ず決まった薬をのみ続けなければならない人にとっては、朗報でしょう。

 しかし、のむ回数が少なくてすむということは、のみ忘れについて特に注意が必要です。たとえば1日1回、朝食後にいつものんでいたとして、うっかりのみ忘れ、そのまま職場に。のみ忘れに気づいたときは、薬が手元になく帰宅した夜、薬をのむべきか朝まで待つべきか、悩むところです。

 薬や病態によって対応は異なりますから、ぜひ医師や薬剤師に確認しておきましょう。そしてたとえ1日1回のむ薬であっても、2~3回分は持ち歩くことをおすすめします。(のみ忘れの問題だけでなく、震災などどこで起こるか分かりません。帰宅して薬をのめない場合も想定されますから、是非2~3回分を予備薬として持ち歩くことをおすすめします。)  薬が多様化し、今後も開発が進めば、選択の機会もふえていきます。自分の体に合うかどうかの判断は、自分が一番よく分かるわけです。服用前の症状と服用してからの症状の変化に注意し、不都合な症状があっても薬をのみつづけるそんなことがないように、薬に対する知識と理解を深めていってほしいと思います。

Q10 市販のかぜグスリを、かぜが治るまでのみ続けてもいい? 1回ごとに違う薬をのんでも大丈夫?

 「市販のかぜ薬は、3日以上続けてのまないようにしてください。」家庭医学の本には、しばしばこのように書いてあります。3日間のんでも全然よくならないか、ひどくなっていくようなら、かぜ以外の疾患や二次感染などを起こしている可能性もあります。医師の診断を受けて、症状の改善だけでなく、その症状を引き起こしている原因に合った薬を処方してもらうほうが、結局は早く治ります。ということだと思います。たとえ症状が軽く市販の風邪薬で十分対応可能な場合であっても、この3日間をどんな状態ですごすかが問題です。市販薬だけに頼り不規則な生活をしていれば、効果に限界があります。

 また、かぜを根本からピタリと治してしまう薬は、残念ながらまだありません。薬はあくまでもかぜの症状を軽くするためのもの。その間に自然治癒(ちゆ)力が高まるのを待つのです。ですから、薬をのみながら夜ふかしや深酒をしていては、体の休まるときがないし、かぜは治りにくい。かぜ薬は本来横になってよく眠る、そんな状況で使用したいものです。

 総合感冒薬の中にはいろいろな成分が入っていて、諸症状を抑える働きをします。メーカーが違っても目的は同じですから、同じような効果が得られるはずです。ところが、微妙な成分の違いが、体質や症状の違いとあいまって、効き方に変化が出てきます。同じ薬をのんでも、人によって効き方が違ったり副作用が出たり出なかったりするのです。

 さて、1回ごとに違う薬をのんでも大丈夫かというご質問ですが、特に問題はないでしょう。ただ気をつけたいのは、市販薬の中には作用の持続時間が長いものと短いものがありますから、1日1回のむ薬と1日3回のむ薬は、その作用の持続時間を考えてのむ必要があります。朝1日1回の薬をのんで昼に1日3回の薬をのむ、こんなことをしてはならないわけです。

 また人によっては成分の1つ、またはいくつかが体に合わない場合もあるため、違った薬をのむと、どの製品が原因なのかわからなくなるかもしれません。

 くり返しになりますが、大切なのは市販薬に頼って、だらだらとのみ続けないこと。薬をのんだら、できる限り体を休ませることです。薬だけで早く治そうというのは、ムシがよすぎますよ。薬がちゃんと効きめを発揮できるような環境づくりも必要だということを、お忘れなく。

Q11 買ったあと使わないまま1年ぐらいたってしまった薬が、たくさんあります。のんではダメ?

 ダメなものと良いものがあります。市販薬のほとんどには、“有効期間”や“使用期限”が明記されています。しかしそれはあくまでも正しく保存され、開封していない薬の場合。開封していなくても、温度や湿度の高い場所に置きっぱなしにしていたような薬は、期限内であってもお勧めできません。

 あなたの薬の保存は万全でしたか?自信がおありでしたら、期限内の薬は問題ないでしょう。でも、見かけが変質しているようなら使わないこと。

 一般的に、薬を買ってすぐに開封した錠剤、散剤、カプセル剤の場合は6カ月。坐薬は開封していなくても、やはり6カ月。開封後の内用の液剤(水薬)は10日前後。目薬も開封後1カ月が“有効”の目安とされています。

 よく子供にのませるシロップ剤などを、冷蔵庫に入れたままにしている方がいらっしゃいます。液剤は他の剤形のものと違って、保存性が低いことを肝に銘じてください。

 せっかくの薬を無駄にしたくない、という気持ちはわかりますが、それを使わなかったことが家族の健康につながっているわけです。もったいないけれど、使わなかったことに感謝して捨ててください。どこの家庭にも薬箱があると思いますが、ときには点検して整理しておきましょう。薬箱がない場合は、できるだけ薬を一か所にまとめておくことをお勧めします。そして薬の点検日を決めて行うのもいいですね。私たちは毎年年末、あるいは9月9日を救急の日とし、この日に点検してはどうかとおすすめしています。

 ともあれいざというときに救急箱の中味がちゃんと使えるものであることが大切。薬だけでなく、脱脂綿やガーゼ類も変質することがありますから、1年にいっぺんぐらいは見直したいものです。

 また、薬を買う時にも知恵を働かせましょう。家族がよく使ってきた薬を優先的に選び、少々割高でも量の少ないほうを買うというふうに。どんな薬も、とりあえず1日分(災害時には5日程度)あればいいわけで、必要なら買い足すこともできます。

 さらに、薬を開封した年月日を書き留めておけば、捨てるときの目安になります。市販薬は頼りすぎてはいけませんが、いざというときになくてはならないもの。大事だからこそ、もう少し管理に心配りしてほしいと思います。

Q12 病気で薬の必要な人に、薬だといってただの粉を与えても効くとか。本当でしょうか?

 本当です。効くと思えば効くんですね。“いわしの頭も信心から”です。医学的にはプラセボ効果(心理的効果)といい、小麦粉を薬と全く区別できない形、たとえば錠剤にして与えると、小麦粉をのんだ人の半数以上に効きめがあったと報告があります。

 もちろん、全然効かない人もいて、なぜこういう結果になるのかはわかりません。逆に言えば、ちゃんとした薬でも、効かないと思えば効かないこともある可能性があります。そのへんは人間の心の問題に関わってくるのでしょう。暗示にかかりやすい人は、プラセボ効果も高いといえそうですが、いつまでも続くとは限りません。ニセモノであれば、どこかで馬脚を現すはずです。そして逆のこともあります。薬としての作用がないものも副作用が出るのではと思って使用すると副作用が出る(ノセボ効果)場合もあります。

 新薬を開発するときも、その効きめがプラセボ効果によるものなのか副作用がノセボ効果によるものかどうかを実証しなければなりません。より多くの人に持続的に効く、というデータを集めることで、初めて本当に薬理効果のある薬として認められるわけです。

Q13 痛み止めの薬が頭痛、生理痛、歯痛と、何にでも効くのはなぜ? 効き方に違いはないのですか?

 私たちが痛みを感じるのは、体を傷害するようなさまざまな刺激に対して、痛みを感じる神経が反応するようになっています。痛みを引き起こすメカニズムには、切ったり叩いたりする物理的な刺激や熱による刺激に対して、さまざまな化学物質が関係することが分ってきました。このような化学物質は体の組織の刺激や傷害によって作られ、神経を刺激してその部分の痛みを引き起こしたり、増強するといわれています。この化学物質の中に、プロスタグランジンという物質があります。

 痛みは私たちにとって不快で苦痛を伴うものです。でも、もし痛みを全く感じないとしたらどうでしょう。手が切れても、骨が折れても気づかず、取り返しのつかない状態に陥ってしまうこともないとはいえません。痛みは私たちに、さまざまな危害をいち早く知らせてくれるサインでもあるのです。でもやはり、いつまでも痛いのは困りもの。痛みの原因に対する注意を怠らないようにしながらも、痛みからは早く解放されたいものです。市販されている痛み止めの薬の多くは、プロスタグランジンができるのを抑える薬なのです。プロスタグランジンは頭痛、生理痛、歯痛などのさまざまな痛みに幅広く関係するので、このような痛み止めは各種の痛みに有効というわけです。

 ただし胃痛や腹痛など、内臓の伸びや、周囲の筋肉の収縮けいれんや、胃酸によるただれなどによって起こる痛みには、けいれんを抑えたり、胃酸の分泌を抑えたりする薬が使われ、痛み止めの薬は効きません。痛み止めは、実は何の痛みにでも使えるというものではないのです。自己判断せず、使う前に薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。痛み止めは胃を荒らしやすいなどの副作用がありますから、空腹時にはのまないなどの配慮も必要。そして、くれぐれも薬には頼りすぎないことです。

Q14 目グスリをさすと口が苦くなるのはなぜ? また、1回に1滴ぐらいで効きめは十分に出るのですか?

 さした目薬は涙液と混ざり、結膜のう内にたまり角膜を通って房水、眼内組織に入り、薬の効果を現します。ところが結膜のうにたまる量は、約30μlと限界があり、この限界を超えると、直接流れ出たり、目頭のほうへ流れ、まぶたの縁にある上下の涙点(るいてん)へ吸い込まれていきます。そこから2本の(るい)小管(しょうかん)を通って(るい)のう(目がしらと鼻の間あたりにある)へいったんたまり、()涙管(るいかん)を伝わって鼻の中へ。さらに、のどへ流れ込むことによって苦味を感じるのです。

 苦味の正体は、目薬に含まれる成分そのものの味。市販薬の目薬に使われることが認められている成分は、ざっと60くらい。その中に苦味をもつものがあるというわけです。ただし、苦味の成分が入っていないものもいろいろ市販されています。苦味が体に悪いということはありませんが、気になるようでしたら、うがいをするのもよいでしょう。

 1回の量は、1滴(50μl)で十分。1度にたくさん点眼しても、ほとんどこぼれ出たり、鼻からのどへ流れ込むばかり。少しぐらいならのみ込んでも害はありませんが、短時間にくり返しボタボタ点眼すれば鼻涙管の粘膜や口の中へ入り吸収され、体の中で全身せいの副作用を起こすかもしれません。充血した目を早くきれいにしたいとか目が青く澄むという美容上の目的で、充血をとるための目薬を必要以上に使用する人もいますが、かえって目の血管の反応性を悪くし、充血を起こしかねません。

 目薬は光や熱に変質しやすいものもあります。室温保存とされているものは30℃以下での保存を意味します。最近は夏の気温が高いので細菌の増殖を防ぐためにも封を開けたら冷蔵庫に入れておくことをお勧めします。ただし凍らせないようにしてください。冷蔵庫に保存し、封を切った1カ月くらいのうちに使い切るよう心がけてください。

 最後に、目薬の正しいさし方をご紹介します。目尻の下まぶたを下に引き、目尻へ1滴。このとき、容器の先がまつ毛やまぶたに触れないようにします。あふれた目薬は拭き取り、しばらく(1分程度)は瞬きをせず目を閉じていること。目頭の涙のうの上あたりを押さえると、薬の眼内への移行を高め、鼻からのどへ流れ込みにくくなり、苦味を感じることも少ないようです。また2種類の異なる点眼剤を使用する場合には、少なくとも5分以上薬によっては10分以上間をあけてください。

https://www.nichigan.or.jp/public/disease/ (日本眼科学会 ホームページより)

Q15 栄養ドリンクがたくさん出回っていますが、主にどんな成分が入っているの?効きめはどの程度?

 いわゆるドリンク剤とは滋養(じよう)強壮(きょうそう)剤のことをいいますが、病気を治すのではなく、体調を崩したときの回復補助剤と考えてください。添付文書をみると、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病中病後・食欲不振・栄養障害・産前産後などの栄養補給と、盛りだくさん。

 これらの効果を得るために配合される主な成分はビタミン、生薬(しょうやく)、その他に大別できます。まず、ビタミンの内訳から説明していきましょう。

 ドリンク剤に含まれる主なビタミンは、B1、B2、B6、ニコチン酸、パントテン酸、E。B1は、エネルギーを作り出す糖質の代謝に欠かせないもので、不足した場合の脚気(かっけ)は昔から有名ですよね。B2は、成長促進作用のあるビタミンで、目、口などの粘膜の機能に関係することから、不足すると口内炎や目への影響が知られています。B6は、たんぱく質の代謝に必要なビタミンで、不足するとやはり目、口、耳、鼻の周囲に皮膚炎を起こしたり、神経炎にも関係します。ニコチン酸とパントテン酸もビタミンB群に属し、健康を保つ上で欠かせないもの。Eは、妊娠や出産に関係するビタミンですが、最近では末梢血管拡張作用や抗酸化作用が有名で、「サビ止めのビタミン」ともよばれています。

 以上のビタミン類は、細胞の新陳代謝(しんちんたいしゃ)をスムーズにさせることで、疲労物質を分解したり取り除き、心身の疲労回復に力を発揮します。

 次に、生薬。ドリンク剤に入っている生薬は、ニンジン、イカリソウ、ローヤルゼリー、ゴオウ、ロクジョウ、ハンピ(マムシ)などが中心的存在。強壮・強精作用を筆頭に、それぞれの生薬に複数の効きめが認められています。ニンジンを例にとると、強壮・強精、貧血、低血圧、虚弱体質、自律神経失調症、ストレス、疲労回復などといった具合。

 これらの生薬のエキスやチンキ(生薬をアルコールや水にひたして成分を浸み出させたり、溶かした液)を配合することで、ビタミン類との相乗効果が期待できます。

 その他の成分では、カフェインを代表格にしてタウリン、グルクロノラクトンなどがあります。カフェインは、眠気や疲労感を取り除くためのもので、容量が30~50ml.のミニドリンク剤の場合、ほとんどが50mg程度入っています。コーヒー好きで1日に何杯も飲む人は、ドリンク剤でさらに血中のカフェイン値を上げることに。もし、カフェインを1回300mg分くらい飲めば、頭痛やイライラなどの副作用が出る可能性が。カフェイン抜きもありますので、それらを賢く使い分けてください。

 タウリンやグルクロノラクトンは、肝臓の働きをよくして疲れにくくするなどの作用があるといわれています。

 このように3つに大別できる成分のうち、生薬成分の入っていないドリンク剤はありますが、ビタミンB群が入っていないものは、ほとんどありません。成分量も似たりよったり。あとは価格が高くなればなるほど、生薬成分の種類や量が増えていくといった傾向がみられます。

 効きめに関しては、人それぞれに感じ方も違うでしょうが、ドリンク剤はあくまでも補助的なもの。2本、3本とまとめてのんでもきちんと必要な栄養素を摂ったことにはなりません。私たち人間にとって必要な栄養は、ドリンク剤に含まれるビタミン、ミネラル以外にも、糖質、たんぱく質、脂質があるからです。しかも、これらはまずバランスのよい食事から摂るのが前提。ドリンク剤は食事がわりにならないと思ってください。

 ドリンク剤には、大きく分けてコンビニなど売っている医薬部外品や清涼飲料水と、薬局・薬店でしか買えない医薬品があります。医薬部外品には生薬は含まれていません。単純にビタミンなどの補給なら医薬部外品を、生薬の作用を期待する場合は医薬品といった具合に使い分けることも大切です。医薬部外品や医薬品は、成分や量、効能、用法・用量が必ず明記されています。

Q16 いわゆる西洋薬より漢方薬のほうがマイルドに効いて、体にいいのでは?メカニズムを教えて。

 漢方薬は、自然に存在する植物、動物、鉱物などを材料にした、何種類かの生薬(しょうやく)を漢方医学の長い経験にもとづいて、混ぜ合わせてつくるもの。

 その漢方薬をのむと、配合によるいろいろな成分が、お互いに影響し合いながら体全体に作用。病気の原因となっているものに対して、自分で治す力(自然治癒力)を高める効果が得られるといわれています。

 一方、西洋薬のほうは、生薬中のある成分だけを取り出して、それを化学的に合成したりしたものです。病気の原因や、頭が痛い、熱が高いといったことに対して直接的に作用するのに対して、漢方薬は1つ1つの症状を総合的にとらえて全身に作用させるもの。どちらがいいというより目的が違うものですから、西洋薬と漢方薬それぞれの得意分野を上手に使い分けるのがよいと思います。ただ漢方薬はマイルドでも副作用がないというわけでもありません。葛根湯や麻黄湯、芍薬甘草湯など即効性を期待して使用されるものもあります。また、症状だけでなく体質に合った漢方薬をきちんと専門家に選んでもらうことが大切です。

Q17 酒飲みの人は、薬が効きにくいって、ホント? どうすれば、ちゃんと効くようになる?

 日本酒にして、毎日5合以上も飲むような大酒飲みの場合、肝臓は次々に入ってくるお酒(アルコール)を解毒(げどく)(代謝)するのにおおわらわ。ふつうの人と同じ量の酵素を出していたのでは解毒しきれませんから、自然に他の人より多くの酵素が出ています(酵素(こうそ)誘導(ゆうどう)という)。

 この人が病気になり、お酒を控えて、薬をのんだとしましょう。すると、薬は先にもきしたように胃から腸の間で吸収され、門脈という血管に入って肝臓へやってきます。ここで代謝されるわけですが、ふつうの人よりたくさんの代謝酵素が出ているため、薬を代謝しすぎてしまう。つまり、肝臓のこの酵素で代謝される薬はよく効かなくなります。また、お酒と薬を一緒にのむと、酵素はアルコールの代謝に優先的に使われてしまい、今度は薬の代謝が不十分に。効きめが強く出すぎてしまい、中毒症状を起こしたりします。薬を効かせたいなら、普段から酒量を減らす以外にないでしょう。

Q18 咳止めシロップを一気のみする友人がいます。こんなことして大丈夫なのでしょうか?

 咳止めシロップは、決められた用量を守ってきちんとのむ分には、何も問題はありません。けれども、一度に大量にのむ。長期間にわたって、それを続ける。となれば、大変な結果を招きかねません。一気のみ、そんなことが体にいいはずがありません。友人として、すぐに止めるように忠告すべきです。

 最近では若者を中心にオーバードーズ問題が深刻化していて、命を無くす人もいます。

 市販の鎮咳(咳止め)液剤の中には、リン酸ジヒドロコデインとメチルエフェドリンが含まれています。主体となるのはリン酸ジヒドロコデイン。咳は、咳中枢を刺激することによって起こりますから、咳を止めるには、この中枢の興奮を抑えることが1つの治療法になるわけです。リン酸ジヒドロコデインは咳中枢を抑制する薬なのです。またメチルエフェドリンは気管支拡張作用を期待して配合されていますが、これらの薬のもつ依存性や精神症状も問題となるとされています。

 「一瓶を一気にのむと、元気が出る」と言われ、ある鎮咳液剤2本を毎日、1カ月続けてのんだ20代の女性の場合、最初から「気分がフワーッとして元気が出て、悩み事も忘れることができた」といいます。このトリップ感が尾を引いてやめられなくなり、約1カ月後には覚醒剤中毒に似た精神症状や、ふるえ、動悸(どうき)、発汗、立ちくらみなどの身体的な症状も起こしています。

 それ以後は、ほとんど正常な社会的行動ができなくなり、ついには強制入院・治療といった経路。命は無くさなかったものの、依存が形成されるとそこから離脱するのは大変です。他の乱用者の場合も、症状が悪化するまでの期間の差こそあれ、同じようなケースが数多く報告されています。「嫌なことを忘れる」「いい気分」を一度経験すると、深みにはまっていくのは簡単。人間性を失ってしまうのも簡単なのです。

 以前はハイミナールやシンナーなどの薬物乱用が問題とされていました現在は咳止めが大きく問題とされていますが市販薬は合法的に売られているものです。製薬関係者も乱用防止の策をいろいろと打ち出しました。1度に1回分の量しか出ないように、容器を工夫したり、薬局・薬店では1本以上売らないようにしたり・・・・・・。でもネットで何本も購入できてしまう問題など新たな対策が必要となってきます。

 しかし、本当の解決策は使う側の人間、1人1人の心の中にあるはず。たとえ今ある薬を製造中止にしても、また違う薬が悪用の対象になるだけでしょう。多くの人たちの命にとって大事な薬を、悪者にしていいはずはありません。薬は、使い方次第。命を落としかねないようなことをして、それでも責任とれるという人は1人もいないはずです。

Q19 ステロイド剤を顔に塗ると、たちまち肌がきれいになる!? 本当にそうなら、使ってみたいのですが・・・

 もし使ったら、後悔することうけ合いです。しかもハンパじゃありませんよ。

 ステロイド剤(ステロイドホルモン剤とか副腎(ふくじん)皮質(ひしつ)ホルモン剤ともいう)は、あらゆる病気に使われるといってもいいほど、応用範囲の広い薬。効きめのほうも、ビックリするくらい鋭い。反面副作用もまた多く、ときには重大な症状に陥ることがあります。そのため長期間使い続けると、副作用の危険が高まると同時に、やめたときに急激な症状が出る(リバウンド現象)ことがあります。

 医師はそのへんを十分に考慮し、慎重な使い方をしますから心配いりません。その場合は、勝手に使用をやめるほうが問題です。市販されているステロイド含有の外用剤(軟膏、クリーム他)を、添付文書に記載されたように使用しないで、ステロイド含有の痔の薬を化粧ののりが良くなるといった誤った使用で失敗する例はあります。女性では、あなたのように「肌がきれいになる」といわれて使い出し、あとで泣くケースがあります。

 顔に塗ってみると、確かに透明感が出て色白になったように見えます。これは、薬が顔の表面の毛細血管を収縮させるための蒼白化現象なのですが、化粧ばえはするし、友だちにも「きれいになった」なんていわれると、もうやめられない。

 でも、何カ月も使ううちにポツポツと顔に赤い発疹が出てきます。毛細血管も拡張し、酒さ(しゅさ)(よう)皮膚炎という副作用を経験するかもしれません。これがなかなか治らないので、仕方なく病院へ。医師からは、すぐにステロイド剤の使用を止めるように指示されるはずです。やめれば、症状が悪化してもっとひどい状態に。リバウンド現象が起こるのは承知の上でもやめなければ、ますますひどいことになるのです。

 ステロイド外用剤は、化粧品ではありません。表面のメリットだけをとらえて飛びつき、裏面の恐ろしいデメリットに目をふさがないことです。

Q20 芸能人が下剤を利用してやせた話をしていました。そうしてやせた場合、体に悪い影響はない?

 悪い影響しかありません。

 下剤には、腸内にたまった便のカサを増やしたり、柔らかくすることによって排泄させるタイプと、腸を刺激してぜん動運動を活発にするタイプがあります。現在最も広く使われているのは後者のほうで、大腸を刺激して出す下剤。市販の便秘薬も多くがこのタイプです。慢性便秘の人が、どうにも具合が悪くなった時点で短期間使用する分には、非常によく効く薬といえます。

 しかし、便秘でもない人が利用するとなると、これは薬ではなく“体に毒”。きっと、食事をした後にすぐのんで、習慣的な下痢状態をつくっているのでしょう。ずっと続ければ、下剤性結腸症候群といって、常にトイレに行きたいような、いわゆる“しぶり腹”になってしまいます。栄養を吸収するどころじゃありませんから、確かにやせます。でも、体はグッタリとして、だるくてしかたがない。

 他人からは「やせた」と言われるかもしれませんが、本当は“やつれた”です。また、めったに起こるものではありませんが、発熱と同時にやけどのように皮膚がめくれて痛い、なんていうときは要注意。この副作用、ひどいときには死亡につながることも。やはり美しくやせるには、正しいダイエットと適度な運動。これに尽きると思います。

 同じように、やせる目的で利尿剤を使う人もいますが、すぐにやめてほしいですね。

 尿中に、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、クロールといった、体に大切な成分まで排出され、目まいや脱力感に襲われることがあります。美に対する価値観は人それぞれでしょうが、体に悪いことをして美しくなるはずがない、とは断言できます。

 薬は、本来の目的以外に使用すべきではありません。

 日常生活の中で改善できることは、その部分で改善するのが一番です。下剤も利尿剤も、やせるためには必要ないものです。

Q21 かぜグスリをのむと眠くなったりのどが渇いたり、胃が悪くなったりするのは、どうしてなのですか?

 かぜ薬、市販の総合感冒薬について述べてみましょう。市販の総合感冒薬には、解熱鎮痛(熱を下げたり炎症を抑える)、(ちん)咳去(がいきょ)(たん)(咳をためたり痰を出しやすくする)、抗ヒスタミン(鼻水くしゃみなどを抑える)の各作用をもつ成分とカフェインが、ほぼ共通して含まれています。

 眠くなったり、のどが渇いたりするのは、抗ヒスタミン剤のしわざ。鼻水や鼻づまりを抑える作用があり、“鼻炎用”かぜ薬では、中心となる成分です。眠気を感じるのは、この抗ヒスタミン剤の副作用。仕事を休めない人が眠くなりすぎては困るので、同時にカフェインを入れていますが、人によっては、眠気を強く感じることもあるのです。

 また、抗ヒスタミン剤には、抗コリン作用といって、胃液や唾液の分泌を抑える作用があり、のどが渇くのは、このせいです。抗コリン作用によって胃腸の働きもゆっくりになる人があり、便秘になることも。尿の出が悪くなったり、目がまぶしいという副作用が起こることがあります。

 眠気やのどの渇きを同時に解消しようと、コーヒーや紅茶を何杯ものむ人がいますが、前述したように、総合感冒薬にはカフェインも含まれています。カフェインは頭痛を緩和する作用がありますが、摂りすぎると逆に頭痛が起こったり、カフェインが切れてくると頭痛が起こる(カフェイン離脱頭痛)など問題となります。そうすると、今度はカフェインのとりすぎによる、頭痛という副作用が起こるかもしれません。日頃からコーヒーや紅茶をよくのむ人は気をつけてください。

 それから、あなたはかぜをひいたとき、症状にかかわらずいつも総合感冒薬を買っていませんか? もし、咳だけ、頭痛発熱だけ、という状態なら、抗ヒスタミン剤やカフェインの入っていない咳止め用とか、解熱鎮痛剤を選ぶといいですよ。不必要な成分をのんで、その副作用まで背負うこともないでしょう。

 話を総合感冒薬に戻します。ご質問の“胃が悪くなるのはなぜか”という点ですが、これは解熱鎮痛剤の成分であるアスピリンやイブプロフェンによるものかもしれません。胃の弱い人や、現実に胃潰瘍(かいよう)とか十二指腸潰瘍のある人は、同じ解熱鎮痛作用のあるアセトアミノフェン入りのほうを選んでみてください。こちらのほうが、胃にはやさしいでしょう。

 以上のように、同じ総合感冒薬でも含まれる成分や、成分の量が少しずつ異なります。どれが自分に合うのか、よくわからないときは薬剤師や登録販売者に聞いてみることです。あなたの症状により合った薬を選び出してくれるはずです。

Q22 ピリン疹というのがあると聞きました。どのようなものなのか、くわしく教えてください。

 解熱鎮痛剤の中でピリン系というグループに属する薬でおこる発疹のことです。ピリンに対してアレルギーを持つ人に起こるといわれています。ピリン系の薬は切れ味の鋭い薬として長く使われてきましたが、ピリン疹の他にも血液障害やショック等を起こす薬が出て、今では比較的安全性の高いものだけが使われるようになっています。

 ピリン疹の詳しい部分はよくわかっていませんが、一度ピリン疹が出た人は今後もピリン系の薬に反応する可能性が非常に高くなります。2度目の反応は発疹にとどまらずもっと重くなるかもしれません。ですから痛み止めやかぜ薬などを病院で処方してもらったり、薬局で買うときは、必ず医師や薬剤師、登録販売者に「ピリン過敏症です」と伝えましょう。その時どのような薬でどのような症状が出たか詳細に伝えられるようにしておくといいでしょう。

 もともとアレルギー体質の人は、どんな薬をもらうときにも、医師に言っておくといいですね。また、ピリン系というと、すぐにアスピリンを思い浮かべる人が多いと思いますが、名前にピリンとついていても、またの名をアセチルサリチル酸という非ピリン系の薬。アスピリンはピリン系の薬ではありません。現在市販されているピリン系の薬はイソプロピルアンチピリンだけです。お間違えなく。

Q23 頭痛薬を買ってのんだところ、痛みは治まったけれど、体がフラフラしました。貧血でしょうか?

 市販の解熱鎮痛剤(頭痛薬)の主な成分は、次のようなものです。ロキソプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、エテンザミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン。どれも解熱鎮痛作用を示しますが、作用する場所は異なることがあり、これらのいくつかを組み合わせて効果的に熱を下げ、痛みを止めているものもあります。

 その他に、症状の緩和を目的として催眠鎮静剤(アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロモバレリル尿素)の入っている薬も多く、あなたが「フラフラした」というのは、この催眠鎮静剤のせいかもしれません。

 今度買うときは「睡眠成分の入っていないものを」と、指定してみてください。それでもフラフラするようなら、本当に貧血かも。病院で検査してもらうことをおすすめします。

この記事の
執筆者・情報提供者

堀 美智子

薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター医薬研究所所長。一般社団法人日本医薬品登録販売者会理事。名城大学薬学部卒・同薬学専攻科修了。同大学薬学部医薬情報室、帝京大学薬学部医薬情報室勤務を経て、1998年に医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー設立に参加。1998~2002年日本薬剤師会常務理事。薬剤師への研修をはじめ、薬やサプリメントに関する講演・セミナーを数多く行い、またテレビやラジオ番組にも出演。
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